地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、伊奈町の地域情報サイト「いなナビ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

伊奈町の地域情報サイト「いなナビ」

日本薬科大学からのお知らせ

台湾の魅力を発信します!

ド、ドンという音に、一瞬打ち上げ花火かと錯覚を起こさせるような遠雷、続いて鉛色の空をつんざく電光、9月になると夕立や豪雨、台風の発生、上陸など、あちらこちらで雨のニュースを耳にすることが多くなりました。またいつの間にか夏の代表的な果物であるスイカが姿を消し、秋の味覚である梨やぶどうといった果物が、目立つポップとともに所狭しと陳列棚を独占しています。

最近になって、さいたまキャンパスの構内では、悠々自適に群れをなして飛ぶ赤トンボやひぐらしの鳴き声、そして過日には、構内のローソンの開閉扉にギュッとしがみついて離れない珍客バッタの姿を見かけました。ローソン勤務の職員が、必死に格闘していましたが、ついぞ離れることはありませんでした。
野趣溢るる自然の中で、季節の変化を告げる小さな生き物のお客様達に、自然と笑みが零れ、心和む瞬間でもありました。

ところで、皆様にとって「秋」と言えば何を連想されるでしょうか?
食欲、芸術、読書、スポーツetc、紅葉狩りなども秋の風情が感じられて毎年心待ちに
しておられる方も多いと思います。


夏の暑さが一段落し、凌ぎやすくなって来る秋にこそ思いっきり戸外で過ごしたいと切望される方々に向けて、今回は、いなナビの紙面をお借りし、近くて、今は遠い国「台湾」の魅力についてとっておきの情報をお届けし、あたかも台湾を旅したかのような疑似体験をしていただこうと考えました。

前回の“いなナビ”の記事でご紹介しましたが、薬膳の知恵を活かした梨のレシピを紹介した本学の糸数七重講師が、現在、台湾から一時帰国しております。中長期に亘り、台湾の中国医薬大学での研究を目的とした滞在により、日本と台湾を往来している生活の中で、知られざる台湾の実態についてインタビュー形式で聞き取りを試みました。

【台湾の食習慣】
豚肉が特に好まれています(薬膳的には熱を溜めない肉ということで、暑い地方には適しています)。また、宗教上の理由で人口の1割程度がベジタリアンということもあり、豆腐の種類や大豆たんぱく製品が非常に多く、豆腐料理も様々なものがあります。また日本と比較して野菜を摂る機会が多いようにも思われます。台湾スイーツですと、脂分としてラードを練り込んだ焼き菓子が好んで食べられる一方、切っただけの果物や搾りたての果物ジュースなどが道端で売られ、みな気軽に買ってよく食べています。ちなみにタピオカドリンクですが、基本的に「“若い人”の飲み物」といった認識です(親が幼い子どもに買って飲ませることもあまりありません)。冷たいものを大量に飲むのは身体にとってあまりよくないという感覚があるようです。


【生活の中に活かされている漢方の知恵】
「マンゴーかき氷」など、氷菓でも有名な台湾ですが、気温が高いから、美味しいからといって冷たいものばかり食べない、それは胃腸に悪いというのは共通認識としてあるようです。意外と思われるかも知れませんが、鍋料理を食べることが盛んです(ちなみに台湾では鍋は基本「一人鍋」です。数人で鍋屋にいってそれぞれ一人鍋を食べるという習慣が一般的です。もちろん、二人用や数人で囲む大鍋もありますが、基本が一人鍋なので気楽に鍋が食べられます)。鍋屋は1年じゅう人気です。暑い時は店内にクーラーを効かせて鍋を食べています。また、日本では生薬として使われている当帰、黄耆、高麗人参などを使いやすいパックにした薬膳煮込みの素が何種類も売られていて、スーパーで普通に買えます。皆、ちょっと体調が悪いとき、気候が暑かったり寒かったりで身体に影響が出そうなときなど、この種の薬膳煮込み(レストランのメニューなどでは「養生○○」と書かれていることが多いですし、養生料理の専門店もあります)を状況に合わせて食べます。また「酸梅湯」というスモークした梅の実をベースにした飲み物が効率よく身体の余分な熱を取るとされ、すぐ飲めるようにしてペットボトル詰めしたものがコンビニでも売られており、普通に買えます。生薬を利用して身体のバランスを取ることがごく普通のこととして行なわれています。



【台湾での暮らしで驚いたこと、気付いたこと、日本人には 馴染みのないことなど】
トイレにトイレットペーパーが流せません。下水管が細くすぐ詰まるので、トイレットペーパーはトイレの角の巨大ゴミ箱に捨てることになっています。今ではだんだん改善されてきたのですが、古い建物ではいまだに禁止です。たまにうっかりペーパーを無意識にトイレに捨ててしまい、「詰まりませんように…」と祈りながら3回ぐらい水を流す羽目になります。
良いことといえば、交通費が安いこと。安いというか、台中に至っては悠遊カードというSuicaのようなカードを使えばバスは10kmまで無料で乗れるので、交通費というものがほとんどかかりません。これに慣れてしまうと日本の交通費がやたらと高く感じられ、ものすごく出不精になってしまいます…


【ガイドブックには掲載されていないおススメ観光スポット】
台中がそもそもマイナーなのですが、実はアートの街でもあります。台湾国立美術館は非常に充実しているにもかかわらず、ほとんどの展示が無料で見られます。
また、数年前にできた台中国家歌劇院(国立オペラハウス)は日本人建築家の伊東豊雄さんのデザインで、大変美しい建物です。歌劇院の中のショップも非常に充実しています。台中市内からは少し離れますが、東海大学周辺も若い工芸アーティストたちの工房が集中しており、可愛い雑貨が色々と見られます。また、亞洲大学には、やはり日本人建築家の安藤忠雄さんが設計した現代美術館があります。
ガイドブックには掲載してあるけれども皆なかなかしないのは「観光スポットに泊まる」ことだと思います。「非情城市」のロケ地であり、「千と千尋の神隠し」のモデルともなったと言われる九分や台湾中部の観光地である日月潭は、日帰りでも行ける観光スポットですが、九分の夜景や早朝の日月潭は大変に美しく、まだ人が押し寄せてこない道は絶好の散歩コースです。



【台湾で有名な日本人(ジャンルは問いません)】
阿部寛さんが妙に人気でした。日本式緑茶のイメージキャラクターにもなっているようです。
また、歴史的人物としては、台南の烏山頭ダムを作った金沢出身の日本人技師、八田與一氏が非常に尊敬されています。オランダも清も失敗したダムづくりを成功させ、不毛の地であった台南を有数の穀倉地帯に変えたということで、教科書にも「台湾の父」として記載され、毎年記念祭が行なわれているほどです。

【台湾の魅力】
人が親切で自然が豊かで食事が美味しいこと…とみんな言いますが、まずそれは感じます。
それから生活インフラが日本ほど至れり尽くせりではないけれども必要なものは揃っていて、そして安い。なので、安心して旅したり暮らしたりできます。まだ若い国であることもあり、国民が「自分たちの暮らしはどうすればよりよくなるか」ということを真剣に考えて実行しているのだな、ということが、街の設計から売られている商品に至るまで、随所に感じられます。今回のCOVID-19感染の水際対策を完全に成功させ、マスクを始めとする衛生用品や日用品の流通をコントロールし、いわゆる自粛等を行なわないまま市中感染も抑え込んだ手際の良さも、それができる政府を自分たちが選んだのだという信頼感が根底にあるように思います。暮らしていて希望が持てる国なのです。
さらに、“ちょうどいいぐらいの加減”が成立しているところも魅力です。道がアスファルトで舗装されても、大きな道の中央には土の緑地帯が散歩道として整備され、そこの木陰に入れば夏でも涼しく過ごせます。掃除や木の手入れなど緑地の整備は早朝に警察官が行ない、昼は周辺の住民が行なうなど、皆で自分たちの街を維持している感じです。都市化しても完全に人工的な街にはしないほうが住みよい、という考えが働いているようです。一方で夜市や露店、老街(昔ながらのレトロな街並み)など、雑多な雰囲気のあるところでも、ゴミ捨て場が整備され、道を一本折れたところにあるコンビニでは誰でも清潔なトイレが借りられるなど、決して前時代的な不快感を感じずに済むように整備されています。


【台湾で感動したことなど】
お茶がとにかく美味しいこと。中国茶とはまた少し別の加工方法で作られているようで、台湾茶独特の味わいというのがあります。これがお茶の木の種類でも違い、茶園によっても違い、加工によっても違い…と千差万別だけれどもほぼ外れ無し、というのが台湾茶の魅力です。
お茶の飲み方も多種多様です。タピオカミルクティーのようなティースタンド方式もあれば、小さな茶器を使って淹れて飲む方式もあります。この茶器は日本で買うとそれなりのお値段がするのですが、台湾では日用品であり、日本の20%程度の値段でひととおり使えるものが揃えられます。そしてそれで淹れると本当に美味しいのです。しかも道具はちょっと多いけれども面倒な手順や飲み方はありません。みんな気軽に淹れて気軽に飲んでいます。「お茶屋さんでちょっといい茶葉を買う」だけで格別の飲み物が楽しめます。また、茶の収穫期のお茶の産地を訪ねることができたのも素晴らしい体験でした。摘んだばかりのお茶の葉をその場で1日~1日半で飲める形に加工します。台湾茶は摘まれると茶葉の中に含まれる酵素の働きで自然に発酵を始めるのですが、その時に「白い花の香り」とでも例えたくなるような甘い柔らかい香りを発します。摘んだばかりの茶葉の青っぽい香り、発酵しつつあるときの香り、加熱して発酵を止める時の香りが混然となり、お茶の収穫期には村じゅうが不思議な香りに包まれます。そこでいただいた出来立てのお茶は本当に最高としか言いようのない味でした。


【その他自由記載(とっておきの話など)】
小さな話の種をご紹介します。
日本ではお月見といえばお団子ですが、台湾では何故か家族でBBQをします。それも道にBBQのセットと椅子を持ち出して賑やかに飲み食いしているので、なんだか不思議な感じです。もとはといえばどうも焼き肉のたれの会社の宣伝から始まったようなのですが…。
あとは月餅と文旦(西洋梨のような形をした柑橘類)がお月見(中秋節)の食べ物(こちらは伝統的なもの)で、まるでお中元やお歳暮のように美味しい月餅や文旦を互いに送り合います。
もうひとつ。
年末年始の縁起かつぎの食べ物(ちょうど日本の年越しそばのような)ものもいくつかあるのですが、何故か水餃子もその一つになっています。具を包んだ格好がお金を入れた財布に似ているからだそうで、お財布が常にお金で膨らんでいるように、とのことだそうです。他にも大晦日の日に魚を食べる、ただし食べきらないで翌日(つまり新年)にも同じ魚があるようにすることで来年は一層余裕のある年になるようにと願う(魚と余の発音が同じであることから「年々有魚=年々有余」となる)など、財産に関わる縁起担ぎが多いです。それはそうと、餃子は皮が炭水化物、餡が肉と野菜で非常にバランスが取れており、かつ水餃子だと油を控えることもできるので、日本でももっと水餃子がメジャーになってほしいところです(台湾では餃子と言えば水餃子で、焼き餃子は鍋貼といって別の料理なのです。もちろんこちらも人気の料理です)。


長年、研究者として台湾で暮らす糸数先生が、自ずと地元生活者目線になって語った内容は、決してガイドブックには掲載していない貴重なエピソードの数々であったと思います。
今回の記事で、皆様にも少なからず再発見や、中には180度台湾に対する見方が変わったなどといった方もおられるのではないでしょうか。いつの日にか自由気ままに旅を楽しめるその日を迎えましたら、日本のお隣さんでもあり、友好関係が良好な台湾へ是非お出掛けになってみてはいかがでしょうか?
その際の豆知識として、この記事をお読みにいただけましたら嬉しく思います。
これからも地域住民の皆様の知的好奇心を擽るようなワクワク、ドキドキする楽しい話題をお届けしたいと思います。

※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。