日本薬科大学からのお知らせ
秋から冬へと移ろう季節を五感で楽しむことができる今日この頃、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
スーパーマーケットの果物コーナーでは、つややかな橙色の柿や早生のみかんが陳列され、冬の定番とも言われるおでんや鍋用の食材、スープなどの特設コーナーがいつしか設けられるようになってきました。普段、何気なく買い物をしている食材売り場からも一足早い冬の訪れを感じることができます。
特に気温の変化は顕著で、一桁台の朝などは中々暖かい布団から離れらないという方もおられるのではないでしょうか。日中との気温差を考えると服装選びにも頭を抱えてしまいます。
そんな季節の変わり目でもある10月の最終日、小春日和の薬用植物園を久々に訪ねてみることにしました。
「いなナビ」内で薬用植物園の近況をお知らせするのは実に二年ぶりのことです。
かつて、「いなナビ」の記事に「いいね!」が付けられていた頃は、薬用植物園の記事に多くの「いいね!」をいただき、皆様方の関心の高さを窺い知ることができました。
私自身は、本学で行われるイベントの参加者に同行して、幾度となく薬用植物園を訪れていたものの、広報担当として撮影に集中するあまり、じっくり観察するまでには至りませんでした。
やわらかい日差しに包まれた薬用植物園で、先ず目に飛び込んできたのは薄黄色で拳以上の大きさはあるであろう「かりん」の果実に、思わずシャッターを切りました。
「かりん」の木の手前で見ごろを迎えていたのは、さやえんどうの花、スイトピーなのかと見まちがうような赤や赤と白がミックスされた「チェリーセージ」の花で、風にゆらゆらと揺れる様は、何とも言えぬ愛くるしさを感じさせるものでした。
季節外れの温もりを感じながらアーチをくぐり、温室の中に入ると、中々お目にかかることができないコーヒーの緑色の果実の中に、ちらほら赤く色づき始めた果実を見つけることができました。重なり合った大きな葉っぱに赤い果実が一際映えて見えました。
コーヒーの果実から、少し目を転ずると薄いピンク色のプルメリアの花が誇らしげに咲いており、様々な種類の薬用植物が混在している温室ならではの光景に驚きました。
プルメリアの花を逆側から撮影するために回り込むと、何の花かは分かりませんが、ふんわりと香しい匂いが鼻を突きました。
「一体何の花の香りだろう?」かと、どこか覚えのあるような香りの主を探して辺りを見回すとそれは「イランイラン」でした。
「イランイラン」と言えばシャネルの香水のN゜5を思い浮かべる方もおられるかも知れませんが、ゲランのサムサラ、ディオールのディオリシモなど海外のハイブランドといわれる香水の原料として利用されています。
今回は、皆様にも香りでなじみがある花「イランイラン」について詳しく紹介したいと思います。
■「イランイラン」はバンレイシ科イランイランノキCananga odorataとう樹木の通称で、フィリピン、インドネシアといった東南アジアに多く、大きな果実をつける特徴があります。香水の原料やアロマテラピーでも使用される「イランイラン」の精油は花から水蒸気蒸留法で抽出するそうですが、黄色い花から取れる精油が最高の香りとされています。「イランイラン」の精油の主な成分は、リナロール、ゲラニオール、酢酸ベンジルなどでリナロールやゲラニオールには抗不安作用があり、過度の緊張による過呼吸や心拍をスローダウンさせる効果もあるようです。また、「イランイラン」には皮脂の分泌バランスを整える作用があり、スキンケアや頭皮への強壮効果などにより、毛髪ケアへの効果も期待できるとのことで、「イランイラン」の原産国である南国の国々では、ココナッツオイルに「イランイラン」の精油を混ぜてヘアケアに使っているそうです(注1)。
様々な活用方法がある「イランイラン」ですが、一方では強い香りを放つことから、香りを好まれる方が十分注意をしながら適量を使用するのがよいとされています。
※なお、日本アロマ環境協会(AEAJ)では、身体に使用する際の精油の濃度は0.05%を越えないことを推奨しています。また、製品を使用する際は、製品の表示に従って使用して下さい。
「誘惑」、「乙女の香り」の花言葉を持つ「イランイラン」を好んだといわれる世界三大美女のクレオパトラ7世(プトレマイオス朝エジプト女王)、楊貴妃(唐の皇帝玄宗の皇妃)ですが、悠久の昔から好まれた香りが現代にも継承されているなんて少しロマンティックでもあります。
紅葉が見ごろを迎えたというニュースを耳にするようになったのもつかの間、はらはらと枯れ葉が舞い落ちるようになってきました。
もうじき本格的な冬の到来です。
温かいお部屋で花を愛で、大好きな香りに癒されてみてはいかがでしょうか。
(注1)「イランイラン」精油の成分やその作用、使用方法等については下記のサイトの記載を参考としております。↓
https://www.skincare-univ.com/article/005504/
(文責:日本薬科大学 地域連携室)
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。
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