日本薬科大学からのお知らせ
夏の夕間暮れ、さいたまキャンパスの静けさの中でふと耳を澄ますとどこからともなく蜩(ひぐらし)の鳴き声が聞こえてきます。
色褪せて見えた冬の季節から一変、春から夏へいつしか季節は巡り、長引いていた関東の梅雨は、8月になって漸く明けたと気象庁から発表がありました。そして、夏の暑さをもたらす太平洋高気圧の勢力が強まったことで、関東は連日「猛暑」に見舞われています。
これまでの生活スタイルでは、マスクといえば、風邪や花粉症の予防のための機能として使われてきましたが、今やマスクを着けないと入店お断りや肩身の狭い思いをするなど以前であれば考えられないことでした。今やマスクは、ファッションの一部、お財布、携帯、ハンカチ等と同じような必須アイテムとなりました。最近では服装に併せてコーディネートを楽しんだり、好みの素材で手造りをする等義務感からおしゃれを楽しむかのように特に女性の意識は変わってきたように思えます。
ふとカレンダーを見れば、8月7日は旧暦では立秋です。
今年は、小、中、高校生にとっては、短い夏休みとなるばかりか、友人や家族と楽しいひと夏の思い出すら残すことが出来ない言わば「忘れられない夏」となってしまいます。昨年の、また過ぎ去りし日の数々の楽しい思い出が胸に去来することでしょう。
本学学生も登校すら出来ないまま、前期のオンライン講義、試験が終わり、一時勉学から解放され、束の間の休養、休息の時を過ごせる夏休みとなりました。
そこで、今回のいなナビでは、単なる読み物で終わらない実際に体験して楽しんでいただける内容を考えました。題して、『薬膳デザートを作ってみよう!-こころ、カラダリフレッシュ-』です。
本学の特色でもある漢方の知恵を生かした簡単薬膳レシピを皆様にご紹介したいと思います。監修は、本学糸数講師です。現在、台湾の中国医薬大学に留学している関係で台湾と日本を行き来しています。糸数先生の薬膳教室はとても人気があり、毎年多くの方々が開放講座を楽しみにしています。
いつもの夏とは一味違う夏を是非ご自宅で演出してみてはいかがでしょうか?
皆様は、「薬膳料理」と聞くと、色々と材料を揃えるのが大変、作るのに時間がかかりそう、漢方薬を入れるのかしら?等とハードルが高そうなイメージを持たれるかと思いますが、薬膳料理は決して特別な料理ではなく、私達が毎日いただいている野菜、肉、魚といった一般的な食材に薬と同じような薬効があると考えられてきました。起源は、「食薬同源」、「食医同源」を元に予防医学の見地に立つ中国医薬が発展した形で、今日まで脈々と受け継がれてきた「身体のバランスを摂る食事」とも言われています。
では、早速、伊奈町特産の「梨」を使って夏のおすすめ薬膳デザートを作ってみましょう。
さぁ~Let's try!
※梨の薬膳的な解釈
味:甘微酸(甘く、やや酸味がある)
性質:涼(やや身体の熱を取る)
帰経:肺・胃
期待できる役割:身体の余分な熱を取る、喉から肺にかけて潤す
身体に溜まった熱を冷まし、汗のかきすぎによる消耗を抑え、喉の渇きを潤す。また、このデザートは温かい状態で食べるため、夏場の胃の冷やしすぎも防ぐことができる。
梨:大きいもの1つ
氷砂糖:20g
水:適量
※お好みで…クコの実、レーズンなど
1.梨は皮をむいて芯を取り、食べやすい大きさに切る(煮込むので少し大きめに)
2.切った梨をなべに入れ、ひたひたの水を加えて氷砂糖(好みで増減してください)を入れ、弱火で
氷砂糖がすっかり解け、梨がやや柔らかくなるまで煮込む
3.好みでクコの実、レーズンなどを加え、ひと煮立ちさせたらできあがり
※温かい状態がお勧めですが、冷やしても美味しいです。冷たくして食べる場合の胃の冷えに注意が
必要です。
秋になり、喉の乾燥が気になってきたら氷砂糖をハチミツに変え、生姜ひとかけをスライスまたは千切りにして加えて一緒に煮込む。身体を温め、喉を潤して咳を止めるはたらきがより期待できるメニューとなる。薬膳は食材の性質を知り、環境の変化とのバランスを取るように材料の組み合わせや調理法を変えながら食べることで身体のバランスを取る養生法にもなる。
今回のいなナビにご紹介したデザートレシピはいかがでしたか?
VR(バーチャル)にもお手軽に楽しめる良さはありますが、実際、体験してみると更にウキウキ、ワクワクしてくるのではないでしょうか?
皆様が、日々健やかにお過ごしになれますように、今後もバラエティ豊かな話題を提供し、楽しんでいただける紙面作りを行っていきたいと思います。
シャキシャキとした梨の食感の秘密は、石細胞と呼ばれるものだそうです。
猛暑にこそ、水分たっぷりの梨で身体全体を隅々まで潤してあげましょう。
また、梨のお買い求めの際には是非地元の農家さんでお願いします。
地産地消で地域貢献、笑顔の輪が広がりますね。