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日本薬科大学からのお知らせ

雨の季節に見頃を迎える「紫陽花」(アジサイ)をご紹介します。


沖縄県の梅雨明けが早くも6月14日付のニュースで流れていましたが、日本全国、湿度が高く蒸し蒸しとした梅雨空に覆われています。最近の梅雨は、温暖化の影響もあるのか、しとしと降る雨というより、突然の豪雨に見舞われることが多くなりました。


皆様の中には、「梅雨」と聞くと、どんよりとした憂鬱さをイメージされる方がおられるかも知れませんが、古来、梅雨時の雨は「恵の雨」などと表現されるように、農耕民族の我が国ではお米をはじめとする農作物の生育には欠かせない重要なものでした。そのため、自然への敬意を込めた「慈雨」(じう)という漢字の表記もあります。


自然にとってありがたい雨も、長い間つづくと人々の健康面には悪い影響を及ぼす場合があります。漢方では「湿邪」と言って、これが身体に入り込むと湿熱を生じて胃腸などの働きが悪くなる時があります。リウマチや耳鳴りなども悪化するケースが見られます。すべてではありませんが、日本人にはこの様な傾向が強く出る様です。また漢方で言う「肝(肝臓ではありません)」も悪くなりがちで、怒りっぽくなったり、悲しくなったりする「鬱傾向」症状も出やすくなります。この様な症状が気になり始めた時には、漢方に詳しいかかりつけの薬剤師にご相談されるといいでしょう。



ところで、雨を纏う(まとう)水無月(「無」は「ない」という意味ではなく「~の」と言う意味です)を代表する花といえば「アジサイ」です。アジサイの名勝地は全国至る処にありますが、埼玉県人ならば「美の山公園」が名所と答えるのではないでしょうか。春から初夏にかけては山野を彩る桜やツツジが、初夏の6月下旬から7月中旬頃にはアジサイが見頃を迎えます。この公園には4,500株ほどの色鮮やかなアジサイがまるでドレスのドレープのように斜面を覆い、特に暁の雲海と織りな様は観る者の心を揺さぶる絶景とも言えるでしょう。


とはいえ、観光名所と言われるところにわざわざ出向かなくとも、ふと立ち止まって目を転ずれば、民家の軒先でも色彩豊かな花(装飾化)として愛でることができる身近な花としても親しまれています。一雨毎にその存在感を増すかのように意気揚々と、そして雨風に吹かれ大きな花をゆさゆさ揺らす愛くるしさもアジサイは持ち合わせています。

ここで皆様には、アジサイについての四方山話をいくつかご紹介します。
アジサイ(ガクアジサイ、アジサイ、ヤマアジサイ)の色鮮やかな花びらに見える部分は、葉っぱが変形した萼(がく)の部分です。萼の中央に申し訳なさそうに4枚くらい開いているのが、正真正銘の「花弁」です。私たちの目を楽しませる「萼」の部分は、はじめ色鮮やかな青色をしていますが、梅雨の終わりころになるとピンク色に変わります。理由は、「萼」に含まれるアントシアニンと言う物質が、長雨で土壌のpHが変化して酸性側に傾くために化学変化を起こして変色するからです。
そのため色が変わり始めてほぼ完全にピンク色に変わったら、そろそろ梅雨が終わりとなる目安にもなります。アジサイの中でもジョウザンアジサイと言う種の葉は、「抗マラリア薬」として使います。マラリアには縁のない我が国(古代はありました)では、あまり馴染みのない「常山湯」と言う中国の薬草処方に配合されます。
但し、アジサイは有毒植物であるのでご注意ください。若い葉を山菜と間違えて誤食したりして食中毒を起こすことが毎年報告されていますし、料理店の飾り花として出されたものを誤食して中毒を起こすケースもあります。アジサイには強い嘔吐作用があるアルカロイドを含みますので、食べるとひどい消化器症状を引き起こします。このような点からも一般的には、アジサイは眺めて愛でて楽しむ花と言っても過言ではありません。


本学の広大なさいたまキャンパスの敷地内の区画に植えられているアジサイも寒系色の蒼色の花(萼)がちょうど見頃を迎えています。

ところで、例年ですと5月の第2日曜日は母の日で、一日に限定されていました。しかし、今年は新型コロナの感染拡大防止の自粛要請中で帰省や直接会って感謝の気持ちを伝えることが出来ない人々の為に、5月丸々一ヶ月を「母の月」とするなど特別な配慮も見られました。その母の日に続いて、6月の第3日曜日は父の日です。政府の緊急事態宣言が全国的に解除され、県を跨ぐ移動も徐々に緩和されようとしています。なかには日頃の感謝や労いを直接伝えたいという願いが叶う人もいるかも知れませんね。また皆さまの中には言葉とともにプレゼントを贈る方もおられるのではないでしょうか。

そこで、何を送ったらよいのか迷って決めかねている方に、ぜひおススメなのがアジサイの花です。アジサイの花言葉には、「辛抱強い愛情」、「一家団欒」、「家族の結びつき」などがあります。一家の大黒柱という言い方は些か古い表現かも知れませんが、一家団欒の中心がお父さんというのも素敵な光景だと思います。

ご自宅の庭先、ベランダまたは屋内でも小さな宝石を幾重にもあしらったようなアジサイは、雨とともに一時の憂いを忘れさせてくれると思います。多忙な日々でつい見失いがちになっていた当たり前の日常生活を今、この様な時だからこそ愛おしく思い、自ずと感謝の気持ちが湧いてくるものかもしれません。


本学で撮影したとびっきりのアジサイの写真を掲載しますので、今後来学される機会がありましたら是非薬用植物園や四季折々の花を心ゆくまで堪能して下さい。