日本薬科大学からのお知らせ
ひょっとしたら皆さんも、ご自宅の庭先や畦道で目にしたことがあるかもしれない真っ赤なヒガンバナ
本学特任教授船山 信次先生より写真を提供していただきました。
(9月15日撮影、ご自宅の庭)
夏が終わり、秋風がそよぐお彼岸頃に咲くことから、「彼岸花」と呼ばれています。
またヒガンバナの毒性から、さらに「食べた後は彼岸の向こう側(あの世)に行ってしまう」という意味も込められているとか・・・・・・。
その幽美なたたずまいは、三途の川のほとりに咲いていたとも・・・・・・。
日本の原風景として、人々の脳裏に焼き付いたヒガンバナのイメージのひとつは墓地でした。
かつて、土葬が一般的だった時代、ヒガンバナの毒性でご遺体を動物から守るために、お墓に植えられたとも言われているからです。
今回は、時代とともに変遷を遂げて来た「ヒガンバナ」にフォーカスします。
日本人にとって身近な花であるヒガンバナは、実は中国、長江流域が原産の球根植物で、海を越えて日本に渡来したと考えられています。
ヒガンバナの別名として、よく知られているのは「曼殊沙華」です。
サンスクリット語で「天上の花」の意味があり、良いことが起こる前兆に天から降ってくる花とされています。
ヒガンバナの異名は1,000を超えると言われており、いかに日本人がヒガンバナを愛でて想像力も掻き立てられていたかがよく分かります。
ところで、ヒガンバナと聞けば赤い花を思い浮かべる方が多いと思いますが、白い花を咲かせる種類もあります。
また最近、ピンク色の花を咲かせるヒガンバナが見つかり、市場にも出はじめたようです。
ヒガンバナには、他の植物とは異なる性質があります。
少し専門的な用語が多いですが、写真と照らし合わせながら読み進めていただければと思います。
先ず、何もない地面から高さ30cm~50cmの花茎(かけい)が地上に突出し、その先端に苞(ほう)に包まれた花序(かじょ)が一つだけ付きます。
苞(ほう)が破れると5~7個前後の花が少しずつ顔を出します。
花には短い柄があって横を向いて開き、全ての花が輪生(りんせい)状に外向きに並びます。
そして、開花終了後の晩秋に、水仙の葉のような長さ30cm~50cmの線形の細い葉を出します。
ヒガンバナの葉は、つややかな緑ですが翌春になると全て枯れてしまい、秋になるまで地表には何も生えてこないのです。
つまり、葉と花を同時に見ることができないことから、「葉見ず花見ず」とも呼ばれ、何となく不吉な花とされてきました。
ところが、ピンク色のヒガンバナは、その印象を変えてくれるかもしれません。
球根が高価であり、市場にはまだほとんど出回らずにいるピンク色のヒガンバナには花言葉すらありません。
皆さんも、いつかピンク色のヒガンバナをどこかで見かける機会がありましたら、想いを馳せてみてはいかがでしょうか?
※本学の薬用植物園では、赤い色のヒガンバナが見ごろを迎えています。
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。