地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、伊奈町の地域情報サイト「いなナビ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

伊奈町の地域情報サイト「いなナビ」

ここが私のanother広報いな

発見!ちょっと気になるまちの人 坂口璃々己さん

東京音楽大学 4年生 坂口璃々己(さかぐちりりこ)さん

伊奈町出身。21歳。
中学校で打楽器を始め、その後高校・大学でマリンバを専攻し頭角を現す。学内コンクールはもちろん、KOBE国際音楽コンクールをはじめ数々のコンクールで優秀な成績を残し、昨年の9月に行われた第16回イタリア国際打楽器コンクール(マリンバB部門)では100点満点で1位を獲得した。

※マリンバ…アフリカ起源の木琴の一種。音板の下に円筒形の共鳴管を付けたもの。

なんとなく選んだマリンバが、のちに自分のすべてになった

―――世界でも活躍し始めている坂口さんがマリンバを始めたきっかけはかなり意外なものでした。
「本当は中学でテニス部か吹奏楽部で迷っていました(笑)迷ったあげく吹奏楽部に入り、当初サックスを吹きたかったのですが、いまいち音がうまく出なかったので打楽器を始めました。その後音楽科のある高校を受験するのに、試験が小太鼓かマリンバを演奏するものだったので、なんとなくマリンバを選んだら、高校在学中もよく演奏するようになり、大学ではさらに弾くようになりました。正直ここまで好きになって弾き続けるとは思っていませんでした。今はマリンバなしでは生きていけないです。」

一からリサイタルをつくりあげることでわかったこと

―――取材日当日は大学内の“公開リサイタル試験”がありました。この試験は、演奏するだけでなく自身で企画・運営を行うものでした。試験終了後…
「改めて自分はまだまだだと感じました。やはり何回やっても演奏前は緊張します…。昨日までは緊張より“恐怖”でしたね。一からつくりあげるというのは初めてなので、どうなるかわからないという恐怖…今までで一番大きな挑戦でした。演奏だけでなく運営面が大変で、特にプログラム作成は手こずりました。プログラムは曲の解説を書くのが普通ですが、今回は学内の演奏会ともあって、詩的に書いてみるというチャレンジをしました。演奏する曲に対する想い、曲にどう向き合うか、という視点で作りました。一般公開の試験なので、一般の方がこのプログラムを読んだあとに演奏を聴いて、曲への想像が広がればいいなと思います。」
―――ちなみに衣装は演奏会ごとに曲のイメージに合わせて購入するそうで、今回はなかなかイメージに合ったものが見つからず、元は長袖だったエメラルドの服の袖を自分で切って作ったものだそうです。試験で演奏した曲「飛天生動III Op.75」の飛天(日本でいう天女)や「Aurora Borealis」のオーロラをイメージしている衣装です。

イタリア国際打楽器コンクールでの受賞の背景

―――このコンクールにおいて日本人で100/100点の1位はここ10年ほど出ておらず、快挙となる成績でした。国際的なコンクールでの演奏はさぞ緊張したのではないかと聞くと…
「正直今日の試験の方が緊張したし大変でした。ヨーロッパに行くのは初めてで、早めに到着して3日間観光しました。田舎の海沿いの町で、住民の方が親切な方ばかりで、町になじんでから挑めました。イタリアの有名なところは行けなかったので今度行ってみたいな(笑)」
―――なんとも意外な答えに私も笑ってしまいました。アットホームな雰囲気なコンクールだったと語る坂口さん。そういった環境でのびのびと演奏できたことが、快挙につながったのではないでしょうか。

 

音楽で返していきたい

―――今まで演奏した中で一番好きな曲は?という問いかけから坂口さんの本音が聞けました。
「難しい!(笑)1曲に絞るなら…今日も演奏した「Birdscape Op.20」でしょうか。何度か演奏していますが、難しくて一度も完璧に弾けたことがないですね…。でも、周りの方がこの曲が好きだと言ってくれるんです。イタリアのコンクールでも演奏しましたが、観客や審査員の方から嬉しいお言葉をいただきました。でも…こうやって好きなことを好きなようにやらせてもらっているのは、本当に親のおかげだなと思います。言葉では言い表せないほど感謝しています。今は音楽で返していくしかないと考えています。本当に幸せなことです。」
―――親への感謝を忘れず、音楽に真摯に向き合う姿勢が、坂口さんを大きく成長させているんだなと感じました。

死ぬまで演奏し続けたい

―――卒業したあとはどんな道に進むのか聞きました。
「死ぬまで演奏し続けたいです。マリンバがなくなったら、自分に何が残るかわからないですね。大学院に進んで2年間学び、音楽で食べていけるように結果を出したいです。たまに音楽をしていなかったらどうなっていただろうと考えることもあります。普通の大学生活をして、普通に就職して、という人生も幸せだとは思います。でも、改めて考えると「私はこの道でしか生きていけないな」「選んでよかったな」と思います。」

そういえば…

―――ふと、広報いな8月号で取材したスリジエ中丸葵さんが同級生なのでは?と思いだして聞いてみると…
「同級生です!中学でクラスも一緒でしたよ(笑)特に3年生のときは仲が良かったし修学旅行の班別行動も一緒でした。たしかに昔からアイドルになりたいって言ってたんですよ!ああ…すごく会いたいです。中学のころは毎日のように会ってたんですけど…高校のときは部活が大変だったので地元の友達とかと全然遊べなかったので話してみたいです。」
―――それぞれの場所で活躍する同級生の対談などが実現したらいいなと思いました。伊奈町の若い方がどんどん活躍してきていますね!

 

周りが知らないもう一つの顔

―――素敵な笑顔で明るくインタビューに答えてくれる坂口さんですが、実は周りも知らない素顔についても話してくれました。
「実はリサイタル試験の2週間ほど前、練習が思うようにいかず、自分の納得のいかない演奏を本番でするくらいならやらない方がましだと思っていました。焦りでつらくなり、かなり落ち込んでしまうこともありました。そこから立ち直って頑張り始め、また落ち込むのを繰り返して、3度目の頑張りくらいでやっといつもの調子に戻った感じでした。1日何も手につかない日もありました。」
―――この話を聞いたとき、堂々とした演奏の背景に、こうした努力と葛藤があるからこそ、音に深みが出るのだと確信しました。

坂口さんにとって、マリンバとはー

「自分そのものです。本当に思っていることはなかなか言えないし伝えるのは難しいですが、その思いや言葉に表せない感情を、音楽で表現して誰かに伝わればいいなと思っています。マリンバは私にとって人と関わる手段なのかもしれません。つらいこともありますが、演奏に喜んでくださっているお客さんを見るとまたやりたくなっちゃうんですよね!」
―――坂口さんが演奏を始めた瞬間、私たち観客を含めたすべてが背景の一部になって、坂口さんとマリンバだけがこの場にいるかのような感覚になりました。その音には、坂口さんの真面目な性格と努力が表れていたんだと、取材をしてわかりました。今後の坂口さんの世界での活躍を期待しています!

この記事に関するキーワード